Monday, March 25, 2013

一票の格差訴訟:広島高裁で衆院選無効判決

衆院選後、2つの弁護士グループが全国14の高裁・支部に提訴し、これまで、東京、札幌、仙台、高松の各高裁と名古屋高裁金沢支部の「一票の格差」訴訟で「違憲」、名古屋、福岡両高裁が「違憲状態」と判断しながら、いずれも無効請求は棄却していたが、ついに25日、広島高裁(筏津順子裁判長)が広島1区と2区で行われた衆院選の無効判決を下した。

「最高裁の違憲審査権が軽視されている」と抜本的格差是正に乗り出さなかった国会の怠慢を厳しく批判した筏津順子裁判長に心より拍手を送りたい。

国政選挙を無効とする司法判断は日本では戦後初。議員一人当たりの有権者数の最大格差は千葉4区と高知3区の2.43倍で、今回の訴訟の対象となった広島1区は1.54倍、広島2区は1.92倍だった。

広島1区選出の自民党、岸田文雄外相はこの日、判決を受け「厳粛に受け止めなければならない」と語った。また、同2区選出の自民党、平口洋氏も「重く受け止めなければならない」としながら「少し踏み込み過ぎだ、との議論が出ると思う」と広島高裁での判決を批判した。政治家の都合によっておざなりにされていた有権者の投票権の格差を是正する判決を「踏み込みすぎ」としか考えられないとは、あまりにもお粗末な政治家ではないか。

その他、政界からの反応(FNNより):

安倍首相「判決をよく精査していきたいと思います。適切に対処していきます。」

自民党の石破幹事長「違憲状態の解消ということは、必ずやっていかなければならない。全党が、全国会議員が責任を持たねばならない。」

民主党の細野幹事長「衆議院議員、さらには政権そのものも含めて、正当性に非常に厳しい判断が下された。」

日本維新の会の松野国会議員団幹事長「遅きに失している感はあるが、今からでも、この選挙制度改革、速度を速めないといけない。」

みんなの党の渡辺代表「大変、画期的な判決だと。最高裁において、違憲・無効の判決が出た場合には、早急に選挙のやり直しをやらないといけない。」

総務省は、衆議院選挙区確定審議会が「1票の格差」是正に向けた小選挙区の区割り改定案を、3月28日に安倍首相に勧告すると発表した。



被告の広島県選管は上告するとみられ、判決が確定しない限り、選出議員は失職しない。直ちに無効とはならないが、今後、広島最高裁の判決が全国の「一票の格差」訴訟に与える影響は大きいと思われる。




1票の格差: 衆院選訴訟 広島高裁、初の無効判決 広島1区と2区、11月26日まで猶予

毎日新聞 2013年03月26日 東京朝刊
1票の格差」が最大で2・43倍だった昨年12月の衆院選を巡り、弁護士グループが選挙の無効を求めた訴訟で、広島高裁(筏津(いかだつ)順子裁判長)は25日、小選挙区の区割りを違憲と判断し、広島1区と2区の選挙を無効とする判決を言い渡した。1票の格差を理由にした無効判決は初めて。ただ、混乱回避のために一定期間猶予する「将来効判決」を採用、新たな区割り作業の開始から1年となる今年11月26日を過ぎて、無効の効果が発生するとした。被告の広島県選管は上告するとみられる。【黄在龍】

判決は、1票の格差が悪化する中で衆院選が実施されたと指摘。「選挙権の制約、民主的政治過程のゆがみの程度は重大で、憲法上、許されるべきではない。最高裁の違憲審査権も軽視されており、選挙は無効と断ぜざるを得ない」と述べ、格差を是正しなかった国会を厳しく指弾した。

広島1区の当選者は岸田文雄外相(自民)、2区は平口洋議員(同)。無効判決が確定すると2人は失職、選挙はやり直される。有権者数が最少の高知3区との1票の格差は広島1区が1・54倍、2区は1・92倍だった。

判決はまず、11年3月23日の最高裁判決に言及した。最高裁は、最大2・30倍だった09年衆院選を「違憲状態」とし、各都道府県に1議席ずつを配分し残りを人口比で割り振る「1人別枠方式」の廃止を求めていた。

判決は「最高裁判決で、国会の広範な裁量権は、投票価値の平等に反する状態を是正する高度の必要性から制約を受けることになった」と指摘した。

国会は昨年11月の解散当日に小選挙区の「0増5減」の緊急是正法を成立させた。しかし、最高裁判決から約1年9カ月後の昨年の衆院選には区割り作業が間に合わず、最大格差は2・43倍に拡大、格差2倍以上の選挙区は45から72に増えた。

判決は、格差の是正に必要な期間は1年間との基準を提示。「東日本大震災の対応を最大限考慮しても、最高裁判決から1年半が経過した昨年9月23日までに是正すべきだった」として、国会が合理的期間に格差を正さなかったと判断した。

そのうえで、「憲法の投票価値の平等の要求に反する状態は悪化の一途をたどっている」と指摘、弊害が大きい場合に請求を棄却できる「事情判決」は相当ではなく、選挙無効と結論付けた。


1票の格差:選挙「無効」 広島高裁の判決要旨

毎日新聞 2013年03月25日 21時41分(最終更新 03月25日 23時40分)
昨年12月の衆院選広島1区と2区の選挙を無効とした25日の広島高裁判決の要旨は次の通り。
◆主文

12年12月施行の衆院選広島1区・2区の選挙を無効とする。その効果は、13年11月26日の経過後に発生する。

◆区割り規定の合憲性

11年3月の最高裁大法廷判決は、前回選挙(09年8月施行衆院選)の区割り基準中の1人別枠方式や1人別枠方式を前提とする区割りについて、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたとの判断を示した。12年12月の本件選挙までの間に、1人別枠方式は廃止されたが、1人別枠方式を前提とする区割り規定は是正されなかった。

選挙制度の仕組みについては、国会に広範な裁量が認められており、是正は一般的に複雑かつ困難で、国会での十分な検討が必要で相応の期間を要する。11年3月11日以降、国会が国難というべき東日本大震災の対応に追われており、通常の場合と比較して、ある程度長い期間を要するのはやむを得ない。

しかし、衆院は常に的確に国民の意思を反映することが求められている。11年大法廷判決は、できるだけ速やかに1人別枠方式を廃止し、区割り規定を改正するなどの措置を講ずる必要があると示した。憲法は、三権分立制度を採用し、最高裁に違憲審査権を与えている。民主的政治過程のゆがみを是正する必要性は高く、国会の広範な裁量権は制約を受けるべきだ。国会は区割り規定の改正などを優先的に実行する憲法上の義務を国民に対して負ったと解釈するのが相当だ。

11年大法廷判決でこの義務を国会が負っていることが明らかにされている以上、国会の審議や議決で紛糾することは憲法上予定されていない事態だ。選挙区間の人口格差の「緊急是正法」の施行で審議を再開した衆院選挙区画定審議会は6カ月以内に勧告を行うとされており、国会が国難というべき東日本大震災の対応に追われていたことを最大限考慮しても、11年大法廷判決の言い渡しから1年半の12年9月23日までに区割り規定の是正がされなければ、憲法上要求される合理的期間内に投票価値の平等の要求に反する状態が是正されなかったと言わざるを得ない。区割り規定は本件選挙当時、憲法に違反すると言わざるをえない。

◆本件選挙の効力

選挙を無効とする判決でもたらされる不都合などを勘案し、(選挙無効を回避する)事情判決をすることもあり得る。

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